2011年7月15日金曜日

「簡単な漢字まで仮名書きされる」ことについて 1

7月13日の「常用漢字の難読」にコメントをいただきました。
主旨は「簡単な漢字まで仮名書きされているのが気になります。」というもので、常用漢字の多くが仮名書きされている例を挙げております。また「子供」が「子ども」と書かれる例も挙げております。

確かに日ごろ多くの文章を読んでいて、簡単な漢字を仮名書きしている例は多く見られるところです。
この考察の参考になる文献をいくつか紹介したいが、今日は「井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室」(新潮文庫)から一部引用する。
・〈司馬遼太郎さんは「思う」を漢字で書きません〉
「表記の仕方でも、中国生まれのことばであれば漢字で書くとか、「持つ」というのは大和ことばだから、開いちゃって平仮名で「もつ」としようとか、厳密さを心がける方がいます。司馬遼太郎さんは「思う」を漢字で書きませんでしょう。このことについてわたし、一度、司馬さんにお聞きしたら、「《おもう》というのは、どう考えてみても、大和ことばなんだよ。これを漢字で書くのはおかしい。それで平仮名にひらいているんですよ。」というお答えでした。ですから、表記の場合も平仮名に片仮名、漢字に最近ではローマ字と、たいへん複雑なんです。」

上記引用は、文章上、「大和ことばは平仮名で書く」という人たちがいるということです。
この問題の続きは次回にして、「子供」を「子ども」と書く問題です。
「子ども」の「ども」は「本来複数を表す接尾語」(明鏡)という説明はどの辞書にも見られます。
日本国語辞典には次の説明があります。
・「①元来は「子」の複数を表わす語であり、中古でも現代のような単数を意味する例は確認し得ない。ただ、複数を表わすところから若年層の人々全般を指す用法を生じ、それが単数を表わす意味変化の契機となった。
②院政末期には「こども達」という語形が見出され、中世、近世には「こども衆」という語を生じるなど、「大人に対する小児」の用法がいちだんと一般化し、同時に単数を表わすと思われる例が増える。
③漢字表記を当てる場合、基本的には上代から室町末期まで「子等」であるが、院政期頃より「子共」を用いることも多くなる。近世に入り、「子供」の表記を生じた。」


「子供」の表記は近世からという歴史が面白い。
次は「当て字・当て読み漢字表現辞典」(三省堂、笹原宏之)からの引用。
・〈子ども〉
「子の人権からみると「供」という当て字は不適切な表記であるとして、「子ども」(江戸時代にもあり)が次第に浸透しつつある。」
とあり、近世に生まれた「子供」という漢字表記も「子ども」という表記に移りつつあるようです。
これは日々生きている日本語の変化と受け止めますが、どうでしょうか。

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