2011年9月19日月曜日

【過去問】H22-1 音読み1-5

急に寒くなりました。なんだか世の中のニュースも寒いのが多いですね。
うちの老犬だけはいつも寝てばかりで天下泰平です。

・近世の俳論を【瀏覧】する。
⇒【リュウラン】=通覧すること。目をとおすこと。「劉覧」とも書く。
「瀏」の読みは、「リュウ、きよ‐い」。他の熟語は、
【瀏亮】(リュウリョウ )=瀏喨。 きよく明らかなさま。音がさえてほがらかなさま。
【瀏瀏】(リュウリュウ ) 風の速くふくさま。

・辺境【遐壌】に至るまで巡幸された。
⇒【カジョウ】=遠く隔たった土地。
「遐」の読みは、「カ、とお‐い、はる‐か」。他の熟語は多くあるが、難しそうなものでは、
【遐陬】(カスウ)・(カシュウ ) 中央からとおく離れたへんぴな土地。辺地。
【遐邇】(カジ ) とおい所と、近い所。遠近。
【升遐】(ショウカ ) 天子の死。崩御(ホウギョ)。
【登遐】(トウカ ) ①登って目的地につく。②天子の死のこと。

・事例の【尠少】な現象である。
⇒【センショウ】=すくない。ほんの少し。「鮮少」とも書く。
「尠」の読みは、「セン、すく‐ない」。「尠=鮮」とある。(大漢語林)
「セン」の音が読みにくいが、字通では尠と鮮は同声とあるので、鮮を連想すべし。(新鮮の鮮だから・・・)
他の熟語は、特になし。

・詩文に【刪潤】を加える。
⇒【サンジュン】=詩文のよくないところを削り、足りないところを補うこと。
「刪」の読みは、「サン、けず‐る」。他の熟語は、類似のものが多い。
【刪修】(サンシュウ ) 不要な字句をけずり改めて、文章をよくする。『刪正(サンセイ)・刪節(サンセツ)・刪定(サンテイ)』▽「修」は、形を整える。

なお、孔子が詩経をまとめたという孔子刪詩説から、
【刪詩】(サンシ ) 孔子が、従来伝わった三千余篇の詩のうち重複したものをけずり、礼儀にかなったものを残して、現在の三百余篇の「詩経」を編集したということ。司馬遷の「史記」の孔子世家の記述に基づく。▽この説は一般に採用されたが、のち、唐の孔穎達(クヨウダツ)、宋の鄭樵(テイショウ)らによって、否定された。 (漢字源)

・中納言の【捐館】の事を録した。
⇒【エンカン】=(住みなれた居館を捐(す)ててこの世を去る意) 死去の尊敬語。
「捐」の読みは、「エン、す‐てる」。意味は大きく次の3つ。
①すてる(スツ)。のぞく。不要な部分をすてる。また、取りのぞく。〈類義語〉棄。「捐棄(エンキ)」「捐館=館ヲ捐ツ」「捐階=階ヲ捐ク」〔孟子〕
②私財をだして人を助ける。「義捐金(ギエンキン)」
③私財をさいて官位を得る。「捐班(エンパン)(買官して役人となった者)」

他の熟語は、
【捐官】(エンカン) 中国の制度で、財政不足を補うため人民に金銭または米穀を納めさせ、代りに官職・資格を授けたこと。捐納・捐輸ともいう。
【出捐】(シュツエン) 金品を寄付すること。

はい、休みで時間があるせいか、大変よく勉強しました。

4 件のコメント:

SOS さんのコメント...

こんにちは、たびたびお邪魔します!

「詩経」の孔子による刪詩説に関連して、

中国最古の詩集で、孔子が編集したと伝えられる。
漢の毛亨(もうこう)、毛ちょう(草冠に長)が伝えた書が
唯一の完本のため別称「毛詩」とも言う。
注釈は、毛伝鄭箋(ていせん)20巻の他
唐の孔穎達(くようだつ)の正義40巻
宋の朱熹(しゅき)の「詩集伝」8巻
清の馬瑞辰(ばずいしん)の「毛詩伝箋通釈」32巻
陳奐(ちんかん)の「詩毛氏伝疏」30巻 などがある。
    (広漢和辞典・中・諸橋徹次他 大修館書店)

尚、孔子はこの詩経を儒教の教材として引用して
いることが論語の中でしばしば見られます。

それではまた!

Dogu さんのコメント...

コメントありがとうございます。
刪詩説に関心を持たれたようで、確かに孔子が詩経を編纂したと言うのが一応昔からの通説といってよいでしょう。(論語に20章くらい詩関係の引用等があるのも根拠の一つと考えられます。)
ただ、特に唐代以降の注釈書等で批判的見解が出ていることも事実で、これは決定打が出ない問題ではないかと思います。
白川静の「詩経」にも諸橋轍次の「古典名言辞典」にも明快な主張が見えず、むしろ詩経の内容に視点があるようです。
おかげで勉強になりました。またよろしく。

SOS さんのコメント...

こんにちは!

故事成語(9/17付)のNO4、
「蹄窪の内、蛟竜を生ぜず」は、
たしか昨年の漢検一級の問題として出題され、
最難問の一つとして、当時受験仲間の話題になつた
記憶があります。
一般の辞典等には殆ど出ておらず、
私の確認したところでは、以下の辞典しかないようです。
「故事成語名言大辞典」鎌田正他 大修館書店
「大漢和・広漢和辞典」諸橋徹次他 大修館書店

因みに、この故事成語の出典は「劉子新論、観量」で、

蹄窪の内、蛟竜を生ぜず、
培塿(ほうろう)の上に松柏を植えず。
(培塿は、小さな墓のこと)
それではまた! 

Dogu さんのコメント...

コメントありがとうございます。
確かに「蹄窪の内、蛟竜を生ぜず」は1級問題として、過去の最難問に属すると思います。
批判的に言えば、これは出題として不適当とも言えるかもしれません。もっと1級に相応しい「王道を歩く」的な問題にしてほしいものです。
解説ありがとうございました。