2011年5月24日火曜日

【六花32号H19/6】中国と熟語シリーズⅡ

我酔うて泥の如し(今日は酔っていますよ)。昨日の続きを行ってみよう!
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「紅白事」K・K

 中国の都会は日本と変わらないとよく言われるが、街を歩いていてやはり中国だなと思うのは赤の飾りが多いことだ。建物の外には赤いスローガン、家の中には「囍」や「福」と書かれた赤い紙が貼られている。赤い切り紙、赤い旗、赤い提灯、赤いリボン。中国人は本当に赤が好きだ。
 結婚式の花嫁は頭の先から足の先まで全身赤ずくめになる。招待客が渡す祝儀袋はもちろん赤。新婚夫婦の部屋は枕、掛け布団、それにベッドカーテンも真っ赤だという。それを知った時、私はしみじみ中国人と結婚しなくてよかったと思った。日本人に赤ずくめは耐えられない。
 日本人は白が好きだ。花嫁の白無垢、神社で玉串や注連縄に下げる紙垂、修験者やお遍路さんの白装束など、白には穢れのない清々しさを感じる。
 ところが中国人にとって白は縁起の悪い色で人気がない。京劇の役者が顔に塗る隈取で赤は忠義、白は卑怯を意味している。また中国共産党と国民党との内戦時、革命軍は自らを紅軍と称していたが、対抗する国民党軍を白軍と蔑称していた。なぜそれほどまでに白が忌み嫌われるのだろうか。
 「白」の字源は頭蓋骨、それも風雨に曝された「されこうべ」なのだ。そこに中国の凄惨な歴史を思う。大きな年表から戦争、内乱、反乱の載っていないページを見つけるのは難しい。兵士はもちろん、都市の住民数十万人の虐殺が歴史書に何度も記されている。槍や刀だけでそんなに殺せるのかと半信半疑でいたが、生埋めにするのが最も手軽な方法なのだそうだ。
 昔の都市跡から夥しい量の白骨が今でも発見されている。中国人にとって白は見慣れた不気味な色なのかもしれない。「紅白事」とは赤の吉事と白の凶事、つまり冠婚葬祭のことをいう。
 ところで最近中国の都会ではホテルやレストランで結婚披露宴を行うカップルが多い。中国へ行けば必ず見かける光景なのだが、花嫁は皆縁起の悪いはずの白いウェディングドレス姿で、伝統的な赤い衣裳の花嫁を私はまだ見たことがない。
中国人は千年経っても変わらないとよく言われるが、案外そうでもないかもしれない。

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