2011年5月7日土曜日

【六花46号H23/3】笹原教授講演会報告

会員S・Yさんの投稿です。講演題は「漢字と日本語が紡ぎ出す当て字」です。


■今最も身近な当て字?
 道がこむ、バスがこむの「こむ」は皆さんは漢字でどう書きますか。日本人はたいてい「混む」、日本語を学ぶ外国人は「込む」。常用漢字では「混む」は表外読みで、日本語テキストでは常用漢字表に従った「込む」で教えている。「混む」は「混雑」からの類推で、今回の常用漢字の改訂で表内の読みとして加わった。
漢字の本場中国も当て字だらけ
 梵語のdana(布施・施主)が中国で「檀那」、それを日本では「旦那」と表記。danaはラテン語でdono、英語でdonorとなり、骨髄ドナーなどの日本語に。言葉は世界を巡る。
 「大器晩成」。老子の言葉。一般に「大きな器(才能)は簡単にはできあがらない」と、晩を「おそい」の意で解しているが、「晩」は「免」(=無)の当て字だった可能性が。「大器は成ることは無い」の方がいかにも老子らしい。
 「我」。本来は武器の象形文字。一人称の「ガ」と同音のため、仮借文字(当て字)として「われ」の意味で用いられるようになった。
 現代中国語でも「愛美的」はアマチュア、「愛耐而幾」はエネルギーなど、漢字の意味と無関係に外来語の表記に当てている例がある。
我が国当て字の歴史
 千三百年前の万葉集は、ほとんどが和語であり、漢字(万葉仮名=当て字)で表記されている。恋(こひ)を「孤悲」、桜(さくら)を「作楽」など意味と関連させているもの、「みみにたやすし」を「三三二田八酢四」など遊び心のあるものなど。古今集では杯を「酒月」と重層的なイメージの例も。
 中世では「大恋」で「ひたぶる」、「声花」で「はなやか」などの例が。「夜這ひ」は「呼ばひ」、「師走」は「仕果つ」、「仏滅」は「物滅」、「時計」は「土圭」から。
 当て字はどんどん作られる。「ひと」の当て字は「恋人」「他人」などなんと六十四もあるという。「他人事」を「たにんごと」と読んでしまうのもある面仕方がないのかも。「本田」(本田さんカッケー=かっこいい)「岡田」(岡田氏カッケー)については六花前号でも一部紹介ずみ。第一生命サラリーマン川柳の「離さない 十年たったら 話さない」などのしゃれと当て字の関係は深い。

当て読みもいろいろ
 「当て読み」という語を今回初めて知りました。言葉(=読み)に意外な漢字を当てたのが当て字ならば、漢字に多様な読みを当てたのが当て読みということなのでしょうか。
 「私」に対しては、「わたくし」 「わたし」はもちろん、あちき、あっし、あたい、あて、おいら、わし、などの当て読みがあるそうです。月極「つきぎめ」駐車場は「月決め」の当て字、「げっきょく」と読むのは当て読みだとか。当て字当て読みは生活で学ぶものが多い。雑誌広告記事で「短丈ジャケット」どう読むか。「ショートだけ」と読む人もいる。読みはよくわからなくても意味はわかる。鉄道運賃の「大人」「小人」。「だいにん」「しょうにん」と読むらしい。
 名前にまつわる当て字当て読みとして、田島を「たかはし」、斉藤を「なかじま」など紹介されましたが、頭がおかしくなりそうです。最近の赤ちゃんの命名で「輝星」で「きらら」、「苺苺苺」で「まりなる」、「黄熊」で「ぷう」などは親子関係が心配になります。
  * * *
 会員からの事前の質問にも丁寧に答えていただき、予定された講演時間はあっという間に過ぎました。まだまだ聴きたいという思いを抱きながら、忘年会の会場へと移動しました。笹原教授を囲み、楽しいお話をお聞きしたり、おいしい魚やお酒をいただ
いたりしながら、ゲームあり手品ありの大忘年会を参加者一同で楽しみました。

2 件のコメント:

Dogu さんのコメント...

笹原先生には当同好会としても今後とも交流をお願いしたいと考えています。

Peko さんのコメント...

笹原先生のお話は、軽妙でわかりやすいので、漢字をとても身近に感じます。
そして若いのに、とても人間が出来ていて、先生とお話した後は、とても爽やかな気分になります。
これからも、新潟へドンドンいらしてください。
 m(_ _)m