2011年5月22日日曜日

【言葉探し】雨 (続き)

 昨日から断続的に降っているこの雨は何と表現するんだろうか。霖雨ほど何日も降っていないし、甚雨ほど激しくもなし、煙雨のようにけむるような雨でもない。時雨は晩秋から初冬にかけての雨だし、なんと!雨を表わす言葉はたくさんあるのに適切な言葉を選べないでいるのがなんとも歯がゆい。普通の雨ということにしておこう。

【小糠雨】(こぬかあめ) こまかい雨。ぬかあめ。
【篠突く雨】(しのつくあめ) 篠をたばねて突きおろすようにはげしく降る雨。
繁吹雨】(しぶきあめ) しぶきになって降る雨。
【漫ろ雨】(そぞろあめ) 思いがけなくも降る雨。
【横時雨】(よこしぐれ) 横から吹きつける時雨。
【寒の雨】(かんのあめ) 寒中に降る冷たい雨。
【寒九の雨】(かんくのあめ) 寒九の日に降る雨。豊年の兆しという。
【五月雨】(さみだれ) (サはサツキ(五月)のサに同じ、ミダレは水垂(みだれ)の意という) 陰暦5月頃に降る長雨。また、その時期。つゆ。梅雨。さつきあめ。
【虎が雨】(とらがあめ) 陰暦5月28日に降る雨。この日、曾我十郎が死に、それを悲しんだ愛人の遊女虎御前の涙が雨となって降ると伝える。虎が涙。曾我の雨。
【菜種梅雨】(なたねづゆ) 3月下旬から4月にかけて、菜の花が盛りの頃に降り続く雨。
【春時雨】(はるしぐれ) 春の、急にぱらぱらと降ってはやむ、にわか雨。
【片時雨】(かたしぐれ) 一方では時雨が降り、一方では晴れていること。
【小夜時雨】(さよしぐれ) 夜降るしぐれ。
【叢時雨・村時雨】(むらしぐれ) 一しきり強く降って通り過ぎる雨。
【雨催い】(あまもよい) 今にも雨の降り出しそうな空のけしき。雨模様。

少し長い言葉としては、
【車軸を流す、車軸を下(くだ)す】 雨が車軸のような太い雨足で降ること。大雨の形容。「車軸を降らす」とも。
【卯の花腐し】(うのはなくたし) (クタシは、グタシ、クダシとも。卯の花を腐らす意) さみだれの異称。
【狐の嫁入り】 日が照っているのに雨の降る天気。
【七つ下がりの雨】 夕暮の七つ時を過ぎた頃、すなわち今の午後4時すぎに降り出す雨。「―の雨」
【遣らずの雨】(やらずのあめ) 人を帰さないためであるかのように降ってくる雨。

⇒「繁吹雨」は読めますか?(私は読めませんでした。) 「雨催い」は漢検向きの言葉だがいい言葉ですね。「遣らずの雨」は歌にも使われるムードのある言葉。
「狐の嫁入り」は「狐に化かされていると錯覚して、このような呼び方が生まれたと思われる(日本大百科全書)」という。
「虎が雨」のいわれが面白い。日本国語大辞典では、「陰暦五月二八日に降る雨。建久四年(一一九三)五月二八日、源頼朝が富士の裾野で狩りを行なった時、曾我兄弟が仇敵工藤祐経を討って父の仇(あだ)を報じたが、兄十郎祐成は討死する。その祐成の愛人、遊女虎御前がこれを悲しんで泣く涙が雨になって降ると伝えられる。虎が涙雨。虎が涙。《季・夏》」と解説している。旧暦の5月28日は今年は6月29日に当たるが、使用が狭いためこの言葉は今後も歴史を生き抜いていけるのだろうか。雨の項目はこれで一区切りです。

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